まったり堂

週末、童心に返った。

たまたま近くまで行く用事があったことから、空き時間に、子ども時代を過ごした街に寄ってみた。

覚王山。
今でこそ、名古屋の高級住宅街と言われ、こジャレたお店や高級マンションも目立つが、日泰寺という由緒あるお寺のある古い街。

表通りから一本中に入ると、５０年は経つであろう黒い木塀で囲まれた大きな家や、手入れされた広い日本庭園の家が
子ども時代の思い出そのままに残っている。友人達もそんな大きな家々に住んでいたが、当時のまま。

古い街ならでは、大きな木々も多く、緑ゆたか。風が吹けば、ざーっと葉がさざめき清々しい気持ちになる。

散歩をしながら、かつて住んでいた場所も訪ねてみる。

通っていたカトリック系のちっちゃな幼稚園は閉園していて、園長先生の住居だった洋館と大きな洋犬が走り回っていた庭だけに。洋館は、大正時代のものということで保存住居に指定されていた。

さらに足を進める。目指す先は、住んでいた家の裏庭の先にあった小さな豆腐屋さん。

母に頼まれるとアルミの入れ物を抱え、裏庭の金網の破れをすり抜け、お豆腐を買いに行っていたのだが、さすがにないだろうと思っていたら、あった！

思わず店をのぞきこむと、おじさんが、
「いらっしゃい！」
「おじさん、昔ここに庭が坂になった小さい家があったの覚えてる？」
「あーあー、知ってるよ。大きな木があったよね。」
「そうそう！２５年前までここに住んでたの。」
そんな会話を交わしながら、一丁１００円のお豆腐を買う。

住んでいた家は、ピアノを玄関に置くしかなかったほど小さな家で、弾きながらバランスをくずし、後ろ向きのまま玄関のたたきに転げ落ちたことも。しかも、木がボーボー、草ボーボーだから青大将やムカデもよく登場。

それでも大好きだった。ワタシの原点。

駅に戻る途中、真っ白な蛇が木に巻きついていた山神社に立ち寄る。秋祭り。法被を着て獅子舞をし、厄除けに額に朱を塗ってもらったことを思い出す。

気持ちはすっかり子ども時代に戻り、心もきれいに洗われた。  

ここんとこ、髪を伸ばしている。

昔から肩より長く伸ばすことは、あまりなく、とくにこの数年間は、ずーっとショートヘア。毎月、毎月、サロンに通ってマメにカットしてもらってた。

でも、行き着けのサロンで数年来担当してくれているお兄さんは、ロングヘアがお好みらしく、行く度に、「お願いだから、伸ばして。」と懇願されていた。

ってことで、「わかった。その代わり、２ヶ月か３ヶ月に一度しか来ないよ。」と言って伸ばし始めたのが、約１０ヶ月前。

伸びるスピードが速いので既に肩甲骨のあたりに。せっかくだし、もう少し伸ばしてみようと思ってるけど、なんてったって、乾かす時間が要るので面倒くさい。

でも、ちょびっとはウレシイこともあり、心やさしい人は、「オンナっぽくなりましたね。」とか、「雰囲気変わりましたね。」と言ってくれる。

だが、だが、身近な人ほど言ってくれない。

「そんなことぐらいで、人間、変わんないぜ！」「髪変える前に、顔変えて来い！」くらい思ってるのか。。。

ふんっ、ふんっ！整形して、化けて出てやる！！  

「前髪、切ったね。。。」

と、言われた。それも冷た～い口調で。

や、やっぱり、わかった？？

そうなの。

自分で切ったのだが、予定以上にザックザックとやっちまった。

美容院に行くには中途半端だし、でも前髪伸びてうっとおしいし、じゃ、自分で切っちゃえってことで、ハサミを手にしたのだが、なーんかきれいにそろわないよな～と思ってたら、短くなっていた。

これ以上、どう手を入れよっかってなくらい短いし、まとまらないし。。。ボサボサです。

毎日、うんざりした気分だったところに冒頭の冷たい一言。一番言われたくない人に言われたよ～～～。

この暗い気持ちがあと２ヶ月続くのかぁ、、、ハァ。  

帰宅途中の電車で読む本がなかったから人間ウォッチング。

隣のサラリーマン風のオッサン。「夕刊ゲンダイ」のエッチなページ見開きを、２０分間読みっぱなし。

その隣の、やはりサラリーマン風若干オッサン。なんのキャラかわかんないけど、ヌイグルミのようなストラップをつけたケータイをずーっと覗きっぱなし。

目の前の、同年齢くらいの女性。コミック誌を読みふける。

バカなオトナばっかりだ。。。


ふと脇に立っている人影を感じて見上げると、今時珍しく、詰襟のオボッチャン。本を一生懸命読んでいる。

ん？

よーく見ると、表紙カバーに何か殴り書きが。。。

“毎日５ページ！３回読み直す！！”

オーッッッツ。受験生かあ。たいへんだのう。頑張って試験に通って、立派な学生になるんじゃよ。

こんなバカオトナになってくれるなよ。